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 孔雀王の呪法を修持し、巽しき験力を得て、現に仙となりて天に飛ぶ縁 

巻ニ十八

  役優婆塞は、加茂役公、今の高加茂朝臣といふ者なり。大和国葛木郡茅原の村の人なり。自性生まれながらにして知り博く学びて一を得たり。 三宝を仰信ひて之を以ちて業とせす。毎に庶はくは、五色の雲に挂りて、沖虚の外に飛び、仙の宮の賓と携りて、億載の庭に遊び、蕊蓋の苑に臥伏して、養性の気を吸敢はむとねがふ。 このゆゑに晩れにし年四十年余歳を以ちて、また巌窟に居て葛を被て松を餌ひ、清水の泉を沐みて欲界の垢を濯き、孔雀の呪法を修習ひて證に奇異しき験術を得。鬼神を駆使ひて、自在を得、諸の鬼神を唱して、催して日はく 「大倭国の金の峯と葛木峯とに、椅を渡して通はむ」といふ。是に神等みな愁ふ。藤原宮に字御めたまひし天皇を傾けむことを謀る」といふ。天皇勅して、使を遣りて捉らせたまふ。なほ験力に因りて、輒く捕られず。 故に其の母を捉る。すなはち伊図の嶋に流す。時に身は海の上に浮び、走くことが陸が履くが如し。体は万丈に踞り、飛ぶこととぶ鳳の如し。昼は皇の命に随ひて嶋に居て行ひ、夜は駿河の富岻嶺に往きて修ふ。 然うして庶はくは斧鉞の誅を宥され天朝の辺に近かむことをねがひて、故に殺る剣の刃に伏ひて、富岻の表を上る。「斯の輿に放たれて憂へ吟ふ問、三年に至る。是に慈の旨を垂れたまへ」とまうす。 大宝元年歳の辛丑に次るとしの正月に、天朝の辺に近かしめられ、遂に仙に作りて天に飛ぶ。吾が聖朝の入道法師、勅を奉り法を求めて大唐に往く。 法師五百の虎の請を受け新羅に至る。其の山の中に有りて法花教を講く。特に虎衆の中に有りて倭語を以ちて問を拳ぐ。 法師「誰れぞ」と問へば「役優婆塞なり」と答ふ。法師我が国の聖人なりて思ひて、高座より下りて求むれども無し。 彼の一語主大神は役行者に呪縛せられ、今の世に至るまで解脱かれず。其れ奇しき表を示すこと多数にして、繁が故に略はくのみ。 寔に知る、仏の法の修術の広く大なることを。帰り依まばかならず證を得む。

 

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